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交詢社 地球環境研究会 2019年12月5日(木) 概要 山口光恒 地球環境産業技術研究機構(RITE) 参与 「長期 netC02 ゼロ排出に向けて  温暖化「パリ協定」の課題」
 
P.01 長期 netCO2 ゼロ排出に向けて 温暖化「パリ協定」の課題
 
0.はじめに P.02 地球温暖化問題については、東京海上に勤務した経験もあることから、温暖化と企 業のリスクに関するもの、放送大学の教科書、英語の論文など多くの著作あり
 
P.03 世界の異常気象  The Economist 誌 2019 年 9 月 21 日号は The climate issue を特集   IPCCが 2019 年 9 月 25 日に Special Report を発表   Greta Thunberg さんのスピーチは Much talk and a little action   温暖化のリスクとしてのグリーンランドや北極海の氷の融解は、千年位かけて進むが 一度始まったらもどらない(海洋循環がとまる)リスク
 
P.04 茅恒等式(茅陽一氏が提唱)   気候変動の主役C02 =①C02/E(エネルギー)×②E/GDP×③GDP/P(人口)×④P  =(エネルギー当たりのCO2 排出)×(エネルギー効率)×(一人当たり所得)×人口   C02 排出を減少させるために必要なのは  ①エネルギーの脱炭素化 ②省エネルギー ③一人当たり所得低下 ④人口減少 だが、 ③と④はできない(アンタッチャブル)、できるのは①と②のみ   鈴木孝夫教授「世界を人間の目だけで見るのはもうやめよう」  >>> 食物連鎖の中で人間のみ激増している!
 
P.05 本日理解頂きたい点  ・パリ協定が何を意味しているのか ・・・ 何を合意したのか ・Strong weak agreement is better than weak strong agreement that may collapse (強い(格好のいい)合意よりも弱い(格好悪い)合意の方が現実には効果がある The Economist 誌 1990 年) ・・・ パリ協定は weak agreement  ・単純な解決策はない Risk/risk trade-off     ・・・ 非常に複雑 (地球温暖化のリスク)/(温暖化を防ぐことによるリスク)
 
P.06 本日の内容  ・地球温暖化問題の本質  ・対策の究極目標 ・パリ協定について  ・IPCC1.5℃報告と今後の国際交渉への影響  ・従来の対策で欠けている視点 費用便益分析  ・Risk/risk trade-off ・・・ 実例  ・日本の対応と戦略 ・・・ 日本は世界に向けてパラダイムシフトを提案すべき  ・長期ゼロエミッションに向けて

 1.地球温暖化問題の本質 P.07 地球環境問題の本質  ・影響は Global 且つ Regional  ・・・ 地域でずいぶん違う(モルジブは海面上昇で困るが、ロシアは北極海の氷     が融けたほうがよい) ・不確実性大 気候感度・影響・社会経済構造・対策等  ・・・ CO2 濃度が270ppmの倍になったら、気温は1.5~4.5℃上昇と幅大 ・影響は長期、対策は現世代 ・世代間衡平性 割引率問題  ・・・ 今のコストと百年後の便益 ・現世代間衡平性(過去及び将来の排出量) ・・・ 先進国と発展途上国(中国の主張) 温暖化交渉は実は経済交渉  ・削減コストは膨大   ・・・ GDPの数% 本当に払えるのか  ・全世界の協力が必要   ・・・ みんなでやらなければ! しかし、京都議定書以降減っていない!  → 不確実性の下でのリスクマネジメント   ・・・ 不確実の中での意思決定
 
P.08 地球温暖化問題の構図と不確実性  人間活動(経済活動)→ 温室効果ガス排出→ 温室効果ガス濃度→ 放射強制力 → 気温上昇 >>> 対策(緩和) → 影響 >>> 対策(適応)  この構図の中で、不確実性が増加 コストも違う
 
P.09 不確実の例  ・気候感度(1.5~4.5℃、過去の変化)  ・社会経済状況と1.5℃目標  ・炭素価格($/C02)  2.0℃  2030 年・15-220  2050 年・45-1050   2100 年・175-2340     1.5℃  2030 年・135-6050 2050 年・245-14300  2100 年・690-30100  ・・・ 2100 年までに、化石燃料・産業部門のC02 排出量、森林・農業からの排出・ 吸収量をCO2 ゼロ排出にするには、膨大なネガティブ・エミッションが必要  ・・・ BECCS(Bio energy with carbon capture and storage)
 
2.温暖化対策の究極目標 P.10 気候変動枠組み条約第2条 >>> 今もアメリカは加入している!    ・危険でない濃度での安定化    ・生態系の適応、食糧生産、持続可能な発展を可能とする時間軸    IPCC第4次報告書(2007年 WG3第1章)    ・対策不足(損害、リスク)と過度の対策(悪影響)のバランスの問題    → 環境と経済の両立 >>> バランス!
 
P.11 危険でない濃度とは?    ・なぜ濃度か(人間が制御可能な限界) ・・・ 気候感度1.5℃~4.5℃
   ・危険でない濃度は科学では決められない >>> 政治!     人類が経験したことのない気温上昇を危険と見なし =工業化以降の気温上昇2℃ <<< 過去10万年に上昇した気温2℃
 
3.パリ協定について P.12 パリ協定 2015年12月    ・2℃目標 =工業化以降の気温上昇を「2℃をかなり下回る水準」(可能であれば1.5℃)
     → 濃度目標から気温上昇限度目標へ >>> 政治目標に!    ・今世紀中にGHG(Green House Gas)ネットゼロ排出の実現    ・Top down と Bottom up(プレッジ)の組み合わせ     >>> 京都議定書は失敗 排出量割り当ては合意できない!     >>> 2030年に向けてどこまでできるか、         各国のプレッジを全部合わせても2℃目標にはいかない・・・3℃!
 
P.13 増加を続けるGHG排出    >>> 右肩上がり(2018年度に至るまで上がっている)!    ・化石燃料起源のCO2 はGHGの65%(日本は87%)(2014年度)
 
P.14 パリ協定と2℃目標    大量の負の排出(ネガティブ・エミッション)を前提    ・・・ 膨大なCDRを前提としており、フィージビリティ無視        BECCS :  Biomas Energy Carbon Capture and Storage
 
P.15 排出Gap トップダウン(2℃目標)とボトムアップ(プレッジ)の不整合 ・現在のプレッジのままでは今世紀末の気温は工業化以降3℃上昇 ・プレッジでは1.5℃は無理 ・プレッジの履行自体が疑問  >>> 日本のプレッジも達成は難しい(原子力発電がないとできない)
 
P.16 プレッジの引き上げは可能か >>> 2030年に向けて    ・政治的側面 ・・・ アメリカは受け入れない    ・各国の努力(自主的プレッジの内容)をどう評価するか     >>> コストはどうか?         (中国はコスト上昇がほとんどなく、「エネルギー効率向上」プレッジ)
    ・衡平性での割り当ては可能か     Responsibility(累積排出量)、 Equality(一人当たり排出量)、 Capability(支 払い能力)などの組み合わせ     ・各国へのプレッジ引き上げ割り当てはパリ協定(bottom-up)に反する→困難 
 
4.IPCC1.5℃報告と今後の国際交渉への影響 P.17 2050-2100年に向けての中長期戦略(Global) IPCC1.5℃特別報告(2018年10月)     パリ協定に合意したCOP21からの要請

 P.18 IPCC1.5℃特別報告書(1.5SR)    ・impact 2℃ > 1.5℃ ・・・ 当たり前    ・1.5℃達成には2050年前後で Net Zero 排出 2030年プレッジ対比1/2~2/3削減(2010年比45%削減) ・・・ あり得ない ・2℃と1.5℃のコストの比較全く無し
 
P.19 1.5℃と(2℃)の影響とリスクの相違    ・海面上昇の差  10cm    ・種の多様性   105000種のうち  6(18)%の昆虫、8(16)%の植物、4(8)%の脊椎動物が消える    ・海温上昇      氷山なしの北極海 100(10)年に一度      サンゴ礁の削減  70-90(99以上)%    ・健康への影響、農作物や経済への悪影響の差
 
P.20 1.5℃排出(削減)シナリオ    ・2050年までには世界全体で net zero 排出が必要    ・2℃以上のマイナス排出(CDR)が必須、種の多様性、食糧との競合等    ・実現可能性、コストは検討無し(政治家に参考にならない)    >>> これは現実的かどうか? 今やらないと間に合わない!
 
P.21 食糧安全保障との Trade-off       >>> 気温上昇による損害と飢餓のリスク        対策によって飢餓リスクは減るが、経済的リスクは増える!
 
P.22 1.5℃目標とプレッジの整合性 ・・・ 整合性全く無し    ・プレッジが履行された場合 2010→2030年の世界GHG排出量は49→52-58GtonCO2e    ・1.5℃達成には2030年に2010年比45%減    ・2030年以降急激な排出削減を行っても1.5℃目標達成は困難
 
P.23 1.5℃特別報告書の海外の評価    ・気温目標を2℃から1.5℃に引き下げることによるメリットとそのための追加的 コストなしでは政治家は判断できない    ・現状とかけ離れた対策シナリオは温暖化への関心を低下させる
 
P.24 1.5℃報告の国際交渉への影響    ・本年9月末の国連気候サミット      77か国が2050年 net zero 排出にコミット(米中印露日等は同意せず)      ドイツふくむ32か国が石炭火力新設停止宣言    ・12月のCOPでのNDCの扱い
   ・気温目標の達成確率の意味
 
P.25 気温上昇とCO2(炭素予算)    ・CO2 の life time  >>> 温室効果の高いメタンは12年で消えるがC02 はずっと続く!    ・気温効果 ・・・ CO2 の排出が続く限り気温は上昇を続ける     Carbon Buget(炭素予算) >>> 予算=利用可能な「量」
 
P.26 1.5℃/2℃の実現可能性    ・炭素予算  1.5℃:420-580Gt  2℃:1170-1500Gt     インフラ(火力発電所等)既存658Gt+計画中188Gt=合計846Gt
 
P.27 対策と国際協力    ・工業国ほど競争力に影響 >>> 例えば鉄鋼業    ・これを無視することは政治的に出来ない    ・貿易への影響軽減策―国境税調整    ・消費ベースと生産ベースのCO2 排出量(先進国vs途上国)
 
P.28 企業経営と気候変動(1)    ・Nestleなど87社が2050年にゼロ排出にコミット     (数値目標設定企業の価値は世界株式市場の14%、排出シェアは2%)    ・Climate Finance Leadership Initiative(CFLI)  ・・・ 再エネ投資支援    ・TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)     ・・・ 気候変動に関する企業の情報開示促進(stranded asset 座礁資産など)
         日本は188社で世界一(2019年8月23日現在)
 
P.29 企業経営と気候変動(2)    全て外国発祥 趣旨は良いが格付機関の信頼性は?    ・CDP(Carbon Disclosure Project)    ・ICP(Internal Carbon Pricing)     ・・・ 企業内部での炭素の価格付け >>> 投資決定!    ・SBT(Science Based Targets)     2℃目標  :清水建設、NEC、積水ハウスなど     1.5℃目標 :小野薬品、丸井、アスクル
 
P.30 企業経営と気候変動(3)    ・「気候変動、経営リスクに」 日本経済新聞 2019 年 12 月 2 日    ・「 France champions EU green standards」 FT Nov 30,2019
 
5.温暖化対策で欠けている視点 P.31 費用便益分析     コストは過小評価される >>> 費用便益分析とは経済学 政治にはない!
 
P.32 太陽放射管理(SRM)について     ・・・ タブーのまま放置しておいて良いか    SRM(Solar Radiation Management)    ・・・ 対流圏へのエアロゾル散布        1991年ピナツボ火山噴火(20MtのSO2 排出で翌年0.5℃低下)    ・安い(今後50年間のGHG放射強制力相殺コスト:年$88)    ・効果が迅速    ・単独で実施可能    ・副作用は未知 → Risk/Risk Trade-off → 早期研究の必要性
 
P.33 SRMに対する新しい考え方    Prof.David keith
 
6.Risk/Risk Trade-off P.34 Risk/Risk トレードオフ    ・SRMのリスク(副作用)は unknown、研究(実験)はタブー視されている     しかし、気候感度が高く大幅気温上昇が予想される時には、温暖化リスクと副作 用リスクのどちらを受容するかの選択が必要    ・CO2 深海投棄(海底投棄はロンドン条約で禁止されている)についても同様    ・BECCS(CCSの場所?)、大規模植林(種の多様性?)も同様    ・原子力(事故のリスクと温暖化のリスク)    >>> 本当の意味での議論がない!        政治家が議論を避けている!        日本では、公開の場で議論することがない!(英国では公聴会がある)        日本には、官尊民卑が残っている!
 
7.日本の対応と戦略 P.35 日本の温暖化対策(短期・中期)    ・2030年  2013年比26%削減 (プレッジ)      電源構成(%)  2016年 → 2030年       化石燃料      83  →   56       原子力        1.7 → 22-20       再エネ       14.5 → 22-24     >>> エネルギーの安全保障と温暖化対策をミックス         2030年の原子力は既存だけでは15%にしかならない!         再エネ普及のためのFITは電力価格上昇を招いた!    ・2050年  80%削減 (2016年5月13日閣議決定) >>> 何年対比か?    ・長期ビジョン 脱炭素化社会(2019年6月11日閣議決定)     今世紀後半の早期に net zero 排出、2050年80%減はその一歩     >>> どのように実現するか? コストは? 絵に描いた餅!
 
 P.36 日本のGlobal戦略     ・気温目標見直し      ・・・ 気温はコントロールできない、行動指針とならない
    ・気温上昇stopは必要     ・C02 ゼロエミッションコンセプトの世界への提示(パラダイムシフト)     ・排出ゼロ技術の検討を進める     ・SRMを含む Risk/Risk Trade-off の研究を進める
 
P.37 主要セクター別技術とバリアー    発電、運輸、鉄鋼
 
P.38 イギリスの2050年 net zero emissions 達成に向けての部門別技術(参考)
 
P.39 イギリス205年 Remaining emissions(参考)
 
P.40 IEA Energy Technology Perspective 2017
 
8.長期ゼロエミッションに向けて P.41 結論    ・不確実性の下での意思決定 risk/risk trade-off    ・Talk,talk but no action    ・問題に正面から向き合う(原子力に同じ)    ・Better strong weak agreement than weak strong agreement that may collapse    ・Net zero emission に向けての地道な努力
 
9.参考 P.42 参考資料    ・不確実性問題    ・2150年ネットゼロの場合の気温上昇    ・Risk/Risk Trade-off    ・費用便益分析    ・日本のプレッジ関連
 
P.43 地球平均気温(GIMST)の曖昧さ
 
P.44 炭素予算問題
 
P.45 何℃程度気温は上昇するか 編集パレットの“見出し”や“パーツ”を用いて内容を入力します。