「会計はこの惑星を救えるか?」

 

2016年5月12日
講演者:会員 三代川正秀
  
講演概要
はじめに
(企業)会計は企業利潤や資本の測定ならびにその管理を中心とする計算秩序であって、測定された利潤や資本は社会的に認知・制度づけられた経済量です。
ギリシャ・ローマに源を発した簿記・会計の歴史を19世紀末に至るまで綴ったA.C.Littleton は、その名著Accounting Evolution to 1900のなかで、会計技法の新しい芽は時代の必要に迫られて生まれ、その環境に即した努力と工夫の上に成長してきた、と結んでいます。このリトルトンの会計史観を踏み台に会計の社会的役立ちに地球の将来を託した著作が現れました。それがジェーン・グリーソン・ホワイト著川添節子訳『バランスシートで読みとく世界経済史』(日経BP社2014.12)です。本日のお話は「会計はこの惑星を救えるか」と問うグリーソン・ホワイトへの私の答です。
そこで、俗に言われる「簿記」や「会計」の概念について、その本来の意義をお話ししましょう。

1 簿記・会計とは何だったか
和紙に太字墨筆で縦書きする帳簿システムが江戸時代に完成しました。オランダ東インド会社の平戸商館(1619-1641)で日蘭貿易に携わってきたFrançoys Caron(1600-1673)が1645年に出版した『日本大王国志』の中で、「伊太利流簿記法を(日本人は)知らないが、勘定は正確で、売買を記帳し、一切が整然として明白である。彼らの計算は細い棒の上に円い小玉を刺した板の上で行われる…。加減乗除比例まで正数と分数とも出来、…尋常の和蘭人が計算するよりも、一層迅速正確である。」と書いています。
当時の洋式算法は「洋式帳簿」に収入欄、支出欄、そして残高欄と、いちいちコラムを設けて「筆算」しました。その引き算方法が洋式釣り銭計算のごとく加法的減法とよばれる残高(入金=出金+残高)を求めました。これに対して和式帳簿は入金も出金も同じコラムに、入(金)・出(金)の符号を付けて記帳するだけで、あとは「そろばん」で直接加減算して残高(入金-出金)を求めてきました。
 洋式簿はT字型の「勘定口座」を設けますが、和式はそろばんで、入金・出金・残高を同時並行して簡単に集計し、試算表まで作成することができました。その結果、大店(おおだな)では各帳面の取引合計から収支計算が、またその勘定残高から期末残高計算が可能でした。
帳簿の正確性を保つため帳簿間のチェック作業「帳合」を毎晩行うことから、大店を営む商人(あきんど)たちは残高計算と収支計算の結果導かれた利益額が一致するという検算方法に気付きました。
簿記とは「帳簿記入」のことで、明治5年8月の学制導入に先立って、文部省がBook-keeping(独:Buchhaltung)を「記簿」と訳し、その学科目の一つとしました。他方、国立銀行設立のため、大蔵省はアレキサンダー・アラン・シャンドを雇い入れて銀行実務を講義させ、その口述録『銀行簿記精法』を印刷出版(明治6年12月)しました。この出版に先駆けること半年前の明治6年6月に福澤諭吉訳『帳合之法』初編二冊(畧式)が、その一年後の7年6月に後編二冊(本式)が翻訳出版されました。福澤はその際Single-Entry(Bookkeeping)を「畧式」と、Double-Entryを「本式」と訳しました。
洋式簿記(Western-style bookkeeping)は、記録の二重性(duality)をルールにした記帳システムです。すなわち、① 帳簿の二重性(仕訳帳と元帳)、② 勘定形式の二重性(借方頁と貸方頁)、③ 記入の二重性(転記の二重性) からなり立っています。
 6、7世紀頃にインドの商人は会計上の必要性から正数(財産)と負数(負債)の概念を知り、借金は負の数で記載してきました。財産も借金もない状態をゼロとしたことから負数が生まれたようです。8世紀以降イスラーム社会にこのことが知られるようになり、11世紀にはアラブの数学者が「負債」に負の数をつかうようになった。後述するルカ・パチョーリも『スムマ』のなかでpとmの記号で使い分けています。
このインド数字(figurae Indorum 紀元前6世紀)はアラビア(773 年)を経由してLeonardo Pisano(ピサのフィボナッチ、フィボナッチ係数〔再起級数〕)の“Liber Abaci"1202.(算板の書)によってイタリアに伝えられました。このアラビア数学に基づく計測からポルトラノ海図(磁石に従えば座礁せずに目的地に到達)や精密に計測された楽曲(五線譜に従うと同じ音が出せる)、遠近法(三次元を二次元で正確に表現)、それに複式簿記などが生まれ、人類は言語では正確に表現できないリアリティを伝達する技法を編み出しました。1462年頃にグーテンベルグがマインツで印刷を開始すると、早くも1494年(1492年コロンブスの大陸発見、1498年ダ・ガマのインド西海岸到達)にアルプスを越えた北イタリア・トスコラーノでフランシスコ派僧侶である数学者フラ・ルカ・パチョーリ(Luca Pacioli)が『スムマ』(数学大全:Summa de Arithmetica,Geometrica,Proportioni et Proportionalita)を出版し、この書の中でヴェネツィア商人の帳簿技術を紹介しました。これが複式簿記です。
 企業の諸活動を数字でもって表現する際に、取引数量(1万台)、売上高(1兆円)、従業員数(1万人)、面積(工場の広さ)、納税額(消費税1億円)など諸々の単位が使用されるが、これらを総合して立体的に写し出す(写像)のが貨幣単位で計測した簿記技法です。
この構造を簡単に示すと、毎日の取引を帳面に記録し、これをその属性毎に分類・集計して損益勘定(経営状況)と残高勘定(企業財産)に振り分ける。その結果の写像が財務表となります。
別の観点からすると、簿記機構内にあるデータは勘定科目別に日々積算された金額数値です。この勘定の原初的姿は財産管理にかかわる責任単位で、現金(出納)係、商品(管理)係、得意先(管理)係、貸付先、借入先、資本主というように企業組織の内外に点在する財産(の管理)係りを示しています。その責任単位(勘定)への加責と免責の記入がなされ、責任が明確(連鎖)となります。これが会計の本質とされるアカウンタビリティ(Accountability)です。
 大航海時代(1600年英国東インド会社)のころになると、商人は株主たち各自の出資に対する応分の配当を計算する必要に迫られ財務諸表をつくるようになりました。その後大衆から出資と称して巨額の資金を集めて、これを発起人(取締役)が持ち逃げする、いわゆるSouth Sea[bubble] company 事件(1721年)が多発しました。そこで、悪いことをするのが株式会社(詐欺的会社)だということになりイギリスでは会社設立禁止令(the Bubble Act,1720) が出されます。
その後1760年代に運河・鉄道・製鉄業などの巨大資本を必要とする産業革命が起こり、多くの出資者からなる株式会社の設立は避けて通れなくなります。インチキな取締役の行為を防ぐ意味から、会社は財務諸表(Financial Statement)を作成し、「会計監査」を受け、これを株主や債権者に開示(暴く:disclosure) しなければならないとする法制がアングロ・アメリカ系諸国にもフランコ・ジャーマン系諸国にも取り入れられ、わが国も明治23年の商法にこの思想が移入されました。
 制度化された財務諸表に真実が写し出されているかどうかは疑問であることから、帳簿をみてもさっぱり分からない株主に代わって、帳簿技術にたけたエキスパートが会計士(bookkeeper→Accountant)を名乗って、財務諸表を監査(audit:聴取)するようになり、独立会計士(independent accountant)の歴史が始まります。
 会計は発見されたものでも発明されたものでもありません。その基礎的構造は生産的に使用する資本と、その使用の果実である利益を結び付ける経済関係に敏感な商人たちが気の遠くなるような時間をかけて試行錯誤的経験過程のなかで進化させてきました。
イタリア・ルネサンス期に完成をみた商人の私的計算用具がゆるやかに世界中に拡散し、この会計上の約束事ないしは慣行は今日では所得の計算用具としても取引の安全を確保する証拠としても必須なものとなって、企業社会における社会的用具としての位置を不動のものにしてきました。
 会計上の約束事は各国の文化的相違や同一国内にあっても業種別の慣行に違いがあるので、その最大公約数を要約・成文化した「会計原則(Accounting principles)」が形成されます。この国の場合、戦後復興政策の一貫として昭和24年に「企業会計原則」が制定されました。その前文には概ね次のように書かれています。
    企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められるところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準である。
 世界各国の会計士(とくにアメリカ・カナダ・イギリス)が国際会計基準委員会(IASC:1973年設立)を構成し、世界基準の会計基準 (IAS:International Accounting Standards) を策定してきました。日本の金融庁証券局や米国SECが加盟している証券監督者国際機構
(IOSCO:International Organization of Securities Commissions)がこの基準を承認したことで、国境をまたがる資金調達や証券の上場を行った時の財務情報開示基準として日本国内でもIASB(International Accounting Standerds Board)の会計基準が認められることとなりました。 

2 科学的管理法の発展(原価計算)
ウェルナー・ゾンバルト(1863-1941)は、資本主義の発達と複式簿記とは車の両輪のように相互に作用して近代社会を構築してきたと言う。この精神構造の啓蒙と近代科学技術の発展がなければ今日の豊かさや便利な社会が育たなかったことでしょう。
英国ヴィクトリア時代に「株式会社」が発生し、これが法制化される過程で会計技法が進化しました。例えば「法人格」を備える会社とは、配当の源泉となる収益を継続的に生み出す事業体であり、ヴェネツィアの商人(自然人)が行っていたような取引毎に損益を清算し、資本を分配した投機的な事業体とは異なっていた。この他、原価計算、有限責任、減価償却という概念が生まれたし、公的な監査という手続きも新たに要求されるようになりました。
工業会計はアントワープのプランタン(Plantan) 印刷工房における原価計算(1563-1567)に始まる。次いで18世紀後半イギリス製陶業の雄Josiah Wedgwoodの製造間接費を意識した経営管理用具としての原価計算が生まれた。
部品の「標準化」は大西部で必需品であった拳銃やライフル銃に関わる汎用部品の融通に始まり、F.W.テイラー(1856-1915)に至っては、正確な原価の決定から利益が生まれるので、人件費、原料費、労働時間、予算を正確に把握しなければならないと指摘して、部品の標準化、分業、組立ラインの効率最適化を進めた。
翻って、維新後この国では、洋式工業技術の移入に伴い、その製造現場のお雇い外国人技術者らによって洋式簿記が実践されてきた。早くも本格的工業簿記教科書『製造所簿記教科書 全』が明治20年(1887)に刊行されている。その当初、近代的な工業化を求めて諸外国に追いつき、特にイギリスの紡績工業との国際的価格競争に打ち勝つために原価計算制度を競って採り入れた。日中戦争が勃発すると原価計算は軍需品の調弁に絡んで異常な発達した。戦後はこの計算制度をベースに財務報告目的を主眼とする「原価計算基準」(大蔵省企業会計審議会 1962年)ができ上がる。
会計はその後統計的な分析手法に接近し、各種の財務分析技法(財務諸表の読み方)を考案、損益分岐点分析、生産性分析、そして金融工学を駆使するリスク分析とその開発が進んできた。

3 国民経済計算(社会会計)
会計の視点から国民経済を把握するアプローチは1930年代の不況期のころから広まった。サイモン・クズネッツ(1901-1985)ら国民経済学者が会計学者と協働し、アメリカの全体経済(貯蓄・消費・投資)を測定する方法を開発した。これが国民総生産(Gross Domestic Product)に代表される「国民経済計算」である。GDPは一国の一定期間に生産された財およびサービスの総額である。その後この概念が国家の裕福度として語られるようになり、一種のGDP fetishism(偶像崇拝)となっていった。
市場経済取引を前提になされる経済計算からは捕捉できない資源の世界的枯渇や地球温暖化、公害や交通事故による精神的・肉体的痛手、自然の美しさ、個人の美徳、国への忠誠心などは計測されず、国の繁栄尺度としては疑問であることが問題視されるようになり、最近では国連が従来の経済勘定システム(System of Nation Accounts:SNA)に環境勘定を組み込んだ環境・経済統合勘定システム(System for Integrated Environmental and Economic Accounting, SEEA)を公表し、国民福祉(welfare)の国際比較計算を行うようになってきた。

4  国富論から幸福論へ
近代国家がこぞってGDP指数を自国の富の豊かさとしてきたなか、ブータン王国は「国民総幸福」(GNH: Gross National Happiness)を掲げている。そこでは経済的繁栄(economic prosperity)という計測可能な量的目標に加えて、計測できない三つの目標、すなわち環境保全(environmental preservation)、文化促進(cultural promotion)、良い統治(good governance)をブータンの政策に反映しようとするものであった。
*平山雄太「ブータンのGNH」2014.10.2
*平山修一「アジア諸国のGNHから日本が学ぶ」2015.8.6
*平山雄太「ブータンのGNH国際会議11月報告」2015.12.3
会計は客観的経済尺度に基づいて、会計単位(家、企業、国)が置かれている状況を測定し、勘定分類、集計、再統合を経て比較秤量することから、GNHのような「心情」の評価はできない。
人の幸せを測定するには国民経済計算は何の役にも立たず、現在の地球の、人類の持続可能性と気候変動の問題の大きさを考えれば、環境のコストを簿外にしておく余裕はない。こうした環境の価値が経済発展に貢献していることに経済学者が気付き始めている。このように言うグリーソン・ホワイトはこの地球環境の救世主として「会計」を名指しした。
アメリカでは2010年3月24日に成立した国民健康保険法(法律番号111-148)の5906条に、医療を中心とする社会保障、温暖化防止など個人の幸福度にかかわる主要全国指数システムKNI(Key National indicators System)の開発を定めた。
EUは「2020年戦略(Europe2020)」を掲げ、大学卒業者の比率向上、温室効果ガスの削減、64歳までの就業率向上、貧国者絶対数の削減など5大目標(各数値目標あり)を定め「GDPを超えて(GDP and beyond :Measuring progress in a changing world)」を提案(2009年8月20日)した。
このように量より質の時代へ、国富論(GDP)から幸福論(Happiness)へ新指標を政府が開発するのは、国全体の経済規模の量的拡大よりも健康、教育、環境などの状況を計測し、こうした非GDP指標の数値を引き上げることが重要だと考えたからである。
 ミクロ経済面でも近時は企業情報として非財務情報の重要性が増している。株主の関心事もROE(自己資本利益率)から、ESG(Environment環境,Social対境, Governance統治)の開示に移行してきた。当座の企業存続ではなくして、当該企業の持続可能性を予測する情報にシフトしてきた。特に重要な関心事は「気候変動にかかわる情報」の開示である。米国のSEC(証券取引委員会)は2010年1月に気候変動に関する解釈ガイダンス(interpretive guidance)を公表し、10K-Form提出企業の財務報告に気象変動関連のリスク情報開示を明確にした。そのガイダンスでは、特に①現行の気象変動関連規制に関する重要な影響、②気候変動関連の国際的合意や条約が事業活動に与える重要なリスク・効果、③気候変動関連の法的・技術的・政治的・科学的な事業環境の変化がもたらす機会・リスク、④気候変動の物理的な影響、を記載事項として例示している。

5 カーボン付加価値計算の会計的考察(環境会計)
会計的指標であるROE(自己資本利益率)は資本制社会の効率性(efficiency)を示す概念として親しく使われてきた。
自己資本利益率(return on equity)=売上高純利益率×総資本回転率×財務レバレッジ
純利益     純利益     売上高     総資本
自己資本 =  売上高 ×   総資本×    自己資本

これに負けずとも劣らない価値創造の効率性を示すものに「付加価値」がある。環境に対する企業努力と成果(自然環境へ排出した二酸化炭素量と社会貢献量としての付加価値額の対応にあると仮定して)、すなわち物量(排出ton-CO2)表示される二酸化炭素は自然環境へのマイナスのインパクトであり、金額測定した付加価値額は企業が稼得した社会環境へのプラスのインパクトであることから、これを対比することで、企業活動が環境に如何に反映しているかが判断(環境効率)できる。
次の算式に基づいて二酸化炭素の生産性分析をおこなう。この構造式は付加価値率とカーボン回転率に分解できることから、各比率から有効な解釈が出来よう。
    

 1) 付加価値率は企業の産み出した創造価値額の総取引高(総収入ないし総売上高)比率である。この比率が高ければ、それだけ効率のよい収益を上げ、産み出した付加価値による社会配分(人件費、配当、租税など)ないしは社会貢献度が高いことが示される。
 2) カーボン回転率は排出二酸化炭素のトン当たり(ton-CO2)の総取引高(売上高)を貨幣表示したもので、排出量の効率性ないしは二酸化炭素の生産性を示している。カーボン回転率を企業毎に時系列化を図ると二酸化炭素排出にかかわる企業努力がカーボンあたりの生産性として反映し、有効な指数となる。この比率を環境効率として表示する社会責任 (CSR)報告書が多い。
3) 二酸化炭素生産性は上記のカーボン回転率に付加価値率を乗じた係数である。これは1トン当たりの付加価値額で表示される。この金額数値の高い企業ほど収益性が高く、かつ環境にやさしいことになる。多くの企業がカーボン回転率を環境効率とするなかで、日本特殊陶業のCSRはこの比率を採用していた。このようにして付加価値計算書(出典:EDINET)から導いた各社の付加価値額と二酸化炭素排出量(出典:経済産業省「環境報告書プラザ」)との対比による環境効率(環境格付け指標)を考察したことで、簿記機構を前提とする「環境会計」が可能となった。
4)参考までに産業界では最近ROE(自己資本当期利益率)がカーボン債務(削減費用)によってどのぐらい影響を受けるかの指標(カーボンROE)を構想している。
利益―カーボン債務(15,000円/CO2-ton)
           自己資本


5) この38社の付加価値データを図表で見ると自動車産業の上位二社のほか二酸化炭素生産性の高いのが富士ゼロックスと積水ハウスであった。逆に生産性の極度に低いのは電力業界である。特に、東京電力の数値は、当時中越地震にともなう刈羽原子力発電所や福島第一・第二など計7基の発電機運転中止が、また中部電力にあっては静岡県御前崎の浜岡原発2基の長期運転停止(平成20年12月廃炉決定)に伴う、火力代替が原因と考えられる。
電力・鉄鋼・セメント・紙パルプといった基幹産業において、この生産性と自動車産業のそれとを比較するとおおよそ300倍の相違(トヨタ比)が生じている。また、電力業界の生産性(6社平均ton-CO2 当り5,114.5円)を家庭用3KW太陽光(年間総発電量3,000KW、売電価格60,000円)の年間CO2換算量500トンと比較すると、付加価値ないしは売電価格当りの排出量の23分の1となる。なお、一人当たりの年間CO2 排出量が9.6トンということから推察すると、家庭用太陽光発電が節約するCO2量は50人分ともなる。この辺に電力会社がグリーンエネルギーを買い取る利点はあるようである。

6 カーボン国民総生産性の検討
前出の企業付加価値に代えて一国のGDP(国民総生産高)をその国が排出したCO2 量で除すことでCO2トン当たりの国民総生産額が算定できる。これを仮にカーボン(国民総)生産性(率)と名付け、この生産性が高いほど資源を効率的に消費し、もって国民の豊かさをも示していると仮定してみた。以下に中国の係数を使って等式を示す。
CO2 生産性(効率性)    × 1人当たりCO2排出量    = 国民所得
 GDP(10,380.38十億ドル)            CO2 (8,205.86百万トン)            GDP
 CO2(8,205.86百万トン)       ×        人口(1,364,270千人)     =      人口
  1,265 ドル                      6.015トン              7,609ドル
                                  
<類型の解説>
類型①「上位CO2排出国」
国と地域別の排出総量に代えて排出量順位を「CO2 順位欄」に示し、国民1人当たりCO2排出トンを「1人当たりCO2」欄に表示した。GNH欄にその順位の有無にかかわらず排出量の多い順の10か国がこの表である。GDP順位欄からも伺えるようにみな国民総生産高(GDP)は高い(平均10位)。人口の多い中国やインド、そしてロシア、イランのCO2生産性は低い。GDP19位のサウジアラビア、29位のイランは産油国で、原発はないに等しい。この二か国を除くと原発(カッコ内は発電占有率を%で示す)を保有することでCO2 排出量(化石燃料の消費)を抑制している。
 
日本を例にこの表を説明すると、GNHは53か国中46番と低位にあり、CO2は世界5番目に多く、これに伴うGDPは3番目に位置している。CO2トン当たりのGDPは3,611ドル、国民1人当たりの年間CO2排出量は9.6トンとなる。同程度の排出量を示している国にドイツ(9.8トン)、韓国(11.8トン)が続き、ともに産油国でないことから、原発依存度(日本は2012年休止中)が高い。なお、CO2排出上位5か国のCO2 合計排出量(18,116.35百万トン)は120か国合計(29,886.23百万トン)の61%、同GDP合計額(36,322.61億ドル)は120か国合計(77,055.91 億ドル)の47%に上っている。
類型②「CO2生産性の高い国」
 

類型③並びに④「1人当たりCO2排出量の少ない国」
 

 

累計⑤「1人当たりCO2排出量の多い国」
 

累計⑥並びに⑦「CO2生産性の低い国」
 
 
 類型⑧「その他GNH登録国」
 
類型②は生産性、CO2排出量、国民所得のすべての面で理想的な立ち位置にある。エネルギーの豊富さと福祉国家であることが特徴である。③④は産油国ではなく、農業・漁業を中心とする零細な国家であり、GNHに登録がない地域は生産性、CO2排出量、国民所得など極貧の状態にある。⑤は産油国であり、CO2の消費が多く、生産性が低い。⑥⑦はCO2の生産性が低いにもかかわらず、CO2消費量が高く、多くは産油国である。日本を含む⑧はCO2のコントロールができる経済的に豊かな国家群である。

図表5-1 生産性・国民所得等の総括表
こうして類型②~⑧を統合したこの分布図をいかように考え、地球規模の対策をとるかはそれぞれの国家や地域に住む人々の叡智である。海外の事情を周知の諸氏はこの表をいかに分析されようか。ともあれ、類型②(ヨーロッパの先進国)と類型⑤(産油国)が対照的な位置にありながら、国民所得という観点からは同程度である。GNHの国家間順位の総平均に意義はないものの、前者②8位、後者⑤が25.5位(③39.1位、⑥38.6位)であることからも、産油国のCO21人当たりの消費量削減とその生産性向上(③⑥⑧)の努力が必要である。
最後に総括図に類型①にあった「上位CO2排出国」10か国を投影してみた(図表5-2)。これらの国(特に、ドイツ、韓国、米国、日本、カナダなど)はCO2の排出量はもとより、GDPも高く、1人当たりのCO2消費量を改善し、トン当たりの生産性を向上させる力量のある国々である。
 
ここに提案したカーボン国民総生産性(率)の公式は一国のCO2 当たりGDP生産性に国民一人当たりのCO2消費量を乗じて国民所得としたものです。近代国家が求める国家の豊かさ(国民の幸福度)はCO2の排出量(自然環境)を減らし、国民所得(社会環境)を最大にすることと仮定して、そのためにカーボン国民総生産性(効率)を説いた。その数値には国や地域が置かれている各種エネルギーの入手状況、気候・風土、国民性にも大きく左右されることから、一律の施策は採りようがない。それが次に取り上げるCOP21(パリ協定)で示されたCO2排出規制に関する「共通だが差異のある責任」(原則)という終結であった。

7 COP21のとりきめ
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回契約国会議(The Conference of the Partie 21)がフランス・パリで2015年12月1日から開かれ、同月12日に「パリ協定」を採択して散会した。COP17(2011年)で、2020年以降の新たな温暖化対策の国際枠組みをCOP21の場で採択することとされていたことから、先進国だけに対策を義務付けた京都議定書(COP3)に代わり、途上国を含むすべての国が参加する枠組みを目指し、196の国と地域から代表が集まり議論・調整がなされた。146の国と地域が会議に先立ち提出した自主規制案を尊重し、各国・各地域の削減目標(5年ごとに見直して国連に提出)に法的拘束力を設けず、産業革命前(1850年)の気温をもとに、その後の地球温度の上昇を2℃以内(努力目標1.5℃以内)に抑えようとする目標を立てた。こうして、今世紀後半には人間活動による温暖化ガス(GHG)の排出量を森林や大海などが吸収する量と均衡する状況に減らす努力目標を立てた。また2025年までに途上国に対して年間1,000億ドルを下限とする支援を定めることが盛り込み、途上国の排出量増加を押さえて経済的豊かさを満たす工夫も盛り込まれた。

図表6 新たな温暖化ガス排出削減目標

米 国   2025年に05年比26~28%減
E U    2030年に1990年比40%減
日 本   2030年に13年比26%減
ロシア    2030年に1990年比25~30%減
中 国   2030年にGDP当たりCO2を05年比60~65%減
インド    2030年にGDP当たりCO2を05年比33~35%減
ブラジル  2025年に05比37%減

出典:日本経済新聞10月24日夕刊
各国の提案の中には、削減の比較が不可能に思える連立方程式用の複雑な計算もあり、また2025年までに途上国に対して年間1000 億ドルを下限とする支援(和解)金を支払らい排出量増加を経済的に調整する提案が含まれている。
カーボン付加価値計算は個別企業のCO2の消費効率を指数化したものであった。カーボン国民総生産性は国家単位でのCO2の消費効率指数であったことから、この内外2つの指数による規制が地球環境改善できょう。

むすび
黒澤清教授は半世紀も前に会計学のborder-line science に言及しておられた。すなわち、「(会計は)経済と法律と統計との三つの領域にまたがる研究分野であって、その境界線上に立っている」と。会計は早くから法会計(Legal Accounting…株式会社会計、税務会計など)方面に発達をみる、次いで統計的手法を駆使した管理会計(Managerial Accounting…原価計算、財務分析、予算論など)の方面へ、さらに国民所得や国富ないしは社会資本を測定する社会会計(Social Accounting)に接してそのすそ野を広げてきた。
ちなみに環境省の「環境会計ガイドライン2005年版」(Environmental Accounting Guidelines 2005)に至っては「事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み」とあり、「会計」用語を単なる企業の環境情報システムの一つと解している。
統計と会計との間におけるアナロジーについて「会計は、……原価、利益、資本有高等を測定集計するにあたり、会計特有の様式、すなわち勘定(accounts)、貸借対照表、損益計算書などの手段を強制的に使用しなければならない。統計はこのような強制的様式から自由である」と黒澤教授は諫めていた。
問題は国民経済学や環境科学から「会計」にアプローチすると、会計の本質を見失い、行き過ぎた(会計技法を援用した)国民経済計算(社会会計)や(会計技法を援用した)環境報告書(環境会計)を「会計」に押し付ける恐れがある。そこで(環境や経済に拡大した)会計学をその救世主として推奨したのである。
環境省の「環境会計」は企業サイドであり、企業(の環境)責任や投資意思決定の判断材料を視野にしている。伝統的会計技法から逸脱したこの「環境(報告)会計」という領域に、グリーソン・ホワイトが救世主を求めたもので、本稿は地域環境を斟酌し国民総生産や温室効果ガスの国際的比較から、持続可能な地球環境を確保しようとする愚考である。このように従来の会計とは相当かけ離れた構想を読者諸氏はいかように判断し、実行の緒に就けようか。


<参考文献>
 黒澤清著『近代会計学』改訂増補版4刷(春秋社 1967)
片野一郎訳『会計発達史』(同文舘  1978.7)
ジェーン・グリーソン・ホワイト著川添節子訳『世界経済史』(日経BP社2014.12) DOUBLE ENTRY、How the merchants of Venice shaped the modern world and how their invention could make or break the planet by Jane Gleeson-White
福島清彦著『国富論から幸福論へ』税務経理協会(2011)
岡部光明稿「幸福度等の国別世界順位について」明治学院大学『国際学研究』43号(2013.3)
平山雄太稿「ブータンのGNH」(レジュメ)交詢社地球環境研究会(2014.10.3)
上妻義直稿「気候変動情報の報告」広瀬・藤井責任編集『財務報告のフロンティア』(中央経済社2012.9)
黒川行治稿「公共会計学の展望」大塚宗春・黒川行治責任編集『政府と非営利組織の会計』(中央経済社 2012.4)

2016年5月12日
講演者:会員 三代川正秀
講演題目:会計はこの惑星を救えるか?
  
講演概要
はじめに
(企業)会計は企業利潤や資本の測定ならびにその管理を中心とする計算秩序であって、測定された利潤や資本は社会的に認知・制度づけられた経済量です。
ギリシャ・ローマに源を発した簿記・会計の歴史を19世紀末に至るまで綴ったA.C.Littleton は、その名著Accounting Evolution to 1900のなかで、会計技法の新しい芽は時代の必要に迫られて生まれ、その環境に即した努力と工夫の上に成長してきた、と結んでいます。このリトルトンの会計史観を踏み台に会計の社会的役立ちに地球の将来を託した著作が現れました。それがジェーン・グリーソン・ホワイト著川添節子訳『バランスシートで読みとく世界経済史』(日経BP社2014.12)です。本日のお話は「会計はこの惑星を救えるか」と問うグリーソン・ホワイトへの私の答です。
そこで、俗に言われる「簿記」や「会計」の概念について、その本来の意義をお話ししましょう。

1 簿記・会計とは何だったか
和紙に太字墨筆で縦書きする帳簿システムが江戸時代に完成しました。オランダ東インド会社の平戸商館(1619-1641)で日蘭貿易に携わってきたFrançoys Caron(1600-1673)が1645年に出版した『日本大王国志』の中で、「伊太利流簿記法を(日本人は)知らないが、勘定は正確で、売買を記帳し、一切が整然として明白である。彼らの計算は細い棒の上に円い小玉を刺した板の上で行われる…。加減乗除比例まで正数と分数とも出来、…尋常の和蘭人が計算するよりも、一層迅速正確である。」と書いています。
当時の洋式算法は「洋式帳簿」に収入欄、支出欄、そして残高欄と、いちいちコラムを設けて「筆算」しました。その引き算方法が洋式釣り銭計算のごとく加法的減法とよばれる残高(入金=出金+残高)を求めました。これに対して和式帳簿は入金も出金も同じコラムに、入(金)・出(金)の符号を付けて記帳するだけで、あとは「そろばん」で直接加減算して残高(入金-出金)を求めてきました。
 洋式簿はT字型の「勘定口座」を設けますが、和式はそろばんで、入金・出金・残高を同時並行して簡単に集計し、試算表まで作成することができました。その結果、大店(おおだな)では各帳面の取引合計から収支計算が、またその勘定残高から期末残高計算が可能でした。
帳簿の正確性を保つため帳簿間のチェック作業「帳合」を毎晩行うことから、大店を営む商人(あきんど)たちは残高計算と収支計算の結果導かれた利益額が一致するという検算方法に気付きました。
簿記とは「帳簿記入」のことで、明治5年8月の学制導入に先立って、文部省がBook-keeping(独:Buchhaltung)を「記簿」と訳し、その学科目の一つとしました。他方、国立銀行設立のため、大蔵省はアレキサンダー・アラン・シャンドを雇い入れて銀行実務を講義させ、その口述録『銀行簿記精法』を印刷出版(明治6年12月)しました。この出版に先駆けること半年前の明治6年6月に福澤諭吉訳『帳合之法』初編二冊(畧式)が、その一年後の7年6月に後編二冊(本式)が翻訳出版されました。福澤はその際Single-Entry(Bookkeeping)を「畧式」と、Double-Entryを「本式」と訳しました。
洋式簿記(Western-style bookkeeping)は、記録の二重性(duality)をルールにした記帳システムです。すなわち、① 帳簿の二重性(仕訳帳と元帳)、② 勘定形式の二重性(借方頁と貸方頁)、③ 記入の二重性(転記の二重性) からなり立っています。
 6、7世紀頃にインドの商人は会計上の必要性から正数(財産)と負数(負債)の概念を知り、借金は負の数で記載してきました。財産も借金もない状態をゼロとしたことから負数が生まれたようです。8世紀以降イスラーム社会にこのことが知られるようになり、11世紀にはアラブの数学者が「負債」に負の数をつかうようになった。後述するルカ・パチョーリも『スムマ』のなかでpとmの記号で使い分けています。
このインド数字(figurae Indorum 紀元前6世紀)はアラビア(773 年)を経由してLeonardo Pisano(ピサのフィボナッチ、フィボナッチ係数〔再起級数〕)の“Liber Abaci"1202.(算板の書)によってイタリアに伝えられました。このアラビア数学に基づく計測からポルトラノ海図(磁石に従えば座礁せずに目的地に到達)や精密に計測された楽曲(五線譜に従うと同じ音が出せる)、遠近法(三次元を二次元で正確に表現)、それに複式簿記などが生まれ、人類は言語では正確に表現できないリアリティを伝達する技法を編み出しました。1462年頃にグーテンベルグがマインツで印刷を開始すると、早くも1494年(1492年コロンブスの大陸発見、1498年ダ・ガマのインド西海岸到達)にアルプスを越えた北イタリア・トスコラーノでフランシスコ派僧侶である数学者フラ・ルカ・パチョーリ(Luca Pacioli)が『スムマ』(数学大全:Summa de Arithmetica,Geometrica,Proportioni et Proportionalita)を出版し、この書の中でヴェネツィア商人の帳簿技術を紹介しました。これが複式簿記です。
 企業の諸活動を数字でもって表現する際に、取引数量(1万台)、売上高(1兆円)、従業員数(1万人)、面積(工場の広さ)、納税額(消費税1億円)など諸々の単位が使用されるが、これらを総合して立体的に写し出す(写像)のが貨幣単位で計測した簿記技法です。
この構造を簡単に示すと、毎日の取引を帳面に記録し、これをその属性毎に分類・集計して損益勘定(経営状況)と残高勘定(企業財産)に振り分ける。その結果の写像が財務表となります。
別の観点からすると、簿記機構内にあるデータは勘定科目別に日々積算された金額数値です。この勘定の原初的姿は財産管理にかかわる責任単位で、現金(出納)係、商品(管理)係、得意先(管理)係、貸付先、借入先、資本主というように企業組織の内外に点在する財産(の管理)係りを示しています。その責任単位(勘定)への加責と免責の記入がなされ、責任が明確(連鎖)となります。これが会計の本質とされるアカウンタビリティ(Accountability)です。
 大航海時代(1600年英国東インド会社)のころになると、商人は株主たち各自の出資に対する応分の配当を計算する必要に迫られ財務諸表をつくるようになりました。その後大衆から出資と称して巨額の資金を集めて、これを発起人(取締役)が持ち逃げする、いわゆるSouth Sea[bubble] company 事件(1721年)が多発しました。そこで、悪いことをするのが株式会社(詐欺的会社)だということになりイギリスでは会社設立禁止令(the Bubble Act,1720) が出されます。
その後1760年代に運河・鉄道・製鉄業などの巨大資本を必要とする産業革命が起こり、多くの出資者からなる株式会社の設立は避けて通れなくなります。インチキな取締役の行為を防ぐ意味から、会社は財務諸表(Financial Statement)を作成し、「会計監査」を受け、これを株主や債権者に開示(暴く:disclosure) しなければならないとする法制がアングロ・アメリカ系諸国にもフランコ・ジャーマン系諸国にも取り入れられ、わが国も明治23年の商法にこの思想が移入されました。
 制度化された財務諸表に真実が写し出されているかどうかは疑問であることから、帳簿をみてもさっぱり分からない株主に代わって、帳簿技術にたけたエキスパートが会計士(bookkeeper→Accountant)を名乗って、財務諸表を監査(audit:聴取)するようになり、独立会計士(independent accountant)の歴史が始まります。
 会計は発見されたものでも発明されたものでもありません。その基礎的構造は生産的に使用する資本と、その使用の果実である利益を結び付ける経済関係に敏感な商人たちが気の遠くなるような時間をかけて試行錯誤的経験過程のなかで進化させてきました。
イタリア・ルネサンス期に完成をみた商人の私的計算用具がゆるやかに世界中に拡散し、この会計上の約束事ないしは慣行は今日では所得の計算用具としても取引の安全を確保する証拠としても必須なものとなって、企業社会における社会的用具としての位置を不動のものにしてきました。
 会計上の約束事は各国の文化的相違や同一国内にあっても業種別の慣行に違いがあるので、その最大公約数を要約・成文化した「会計原則(Accounting principles)」が形成されます。この国の場合、戦後復興政策の一貫として昭和24年に「企業会計原則」が制定されました。その前文には概ね次のように書かれています。
    企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められるところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準である。
 世界各国の会計士(とくにアメリカ・カナダ・イギリス)が国際会計基準委員会(IASC:1973年設立)を構成し、世界基準の会計基準 (IAS:International Accounting Standards) を策定してきました。日本の金融庁証券局や米国SECが加盟している証券監督者国際機構
(IOSCO:International Organization of Securities Commissions)がこの基準を承認したことで、国境をまたがる資金調達や証券の上場を行った時の財務情報開示基準として日本国内でもIASB(International Accounting Standerds Board)の会計基準が認められることとなりました。 

2 科学的管理法の発展(原価計算)
ウェルナー・ゾンバルト(1863-1941)は、資本主義の発達と複式簿記とは車の両輪のように相互に作用して近代社会を構築してきたと言う。この精神構造の啓蒙と近代科学技術の発展がなければ今日の豊かさや便利な社会が育たなかったことでしょう。
英国ヴィクトリア時代に「株式会社」が発生し、これが法制化される過程で会計技法が進化しました。例えば「法人格」を備える会社とは、配当の源泉となる収益を継続的に生み出す事業体であり、ヴェネツィアの商人(自然人)が行っていたような取引毎に損益を清算し、資本を分配した投機的な事業体とは異なっていた。この他、原価計算、有限責任、減価償却という概念が生まれたし、公的な監査という手続きも新たに要求されるようになりました。
工業会計はアントワープのプランタン(Plantan) 印刷工房における原価計算(1563-1567)に始まる。次いで18世紀後半イギリス製陶業の雄Josiah Wedgwoodの製造間接費を意識した経営管理用具としての原価計算が生まれた。
部品の「標準化」は大西部で必需品であった拳銃やライフル銃に関わる汎用部品の融通に始まり、F.W.テイラー(1856-1915)に至っては、正確な原価の決定から利益が生まれるので、人件費、原料費、労働時間、予算を正確に把握しなければならないと指摘して、部品の標準化、分業、組立ラインの効率最適化を進めた。
翻って、維新後この国では、洋式工業技術の移入に伴い、その製造現場のお雇い外国人技術者らによって洋式簿記が実践されてきた。早くも本格的工業簿記教科書『製造所簿記教科書 全』が明治20年(1887)に刊行されている。その当初、近代的な工業化を求めて諸外国に追いつき、特にイギリスの紡績工業との国際的価格競争に打ち勝つために原価計算制度を競って採り入れた。日中戦争が勃発すると原価計算は軍需品の調弁に絡んで異常な発達した。戦後はこの計算制度をベースに財務報告目的を主眼とする「原価計算基準」(大蔵省企業会計審議会 1962年)ができ上がる。
会計はその後統計的な分析手法に接近し、各種の財務分析技法(財務諸表の読み方)を考案、損益分岐点分析、生産性分析、そして金融工学を駆使するリスク分析とその開発が進んできた。

3 国民経済計算(社会会計)
会計の視点から国民経済を把握するアプローチは1930年代の不況期のころから広まった。サイモン・クズネッツ(1901-1985)ら国民経済学者が会計学者と協働し、アメリカの全体経済(貯蓄・消費・投資)を測定する方法を開発した。これが国民総生産(Gross Domestic Product)に代表される「国民経済計算」である。GDPは一国の一定期間に生産された財およびサービスの総額である。その後この概念が国家の裕福度として語られるようになり、一種のGDP fetishism(偶像崇拝)となっていった。
市場経済取引を前提になされる経済計算からは捕捉できない資源の世界的枯渇や地球温暖化、公害や交通事故による精神的・肉体的痛手、自然の美しさ、個人の美徳、国への忠誠心などは計測されず、国の繁栄尺度としては疑問であることが問題視されるようになり、最近では国連が従来の経済勘定システム(System of Nation Accounts:SNA)に環境勘定を組み込んだ環境・経済統合勘定システム(System for Integrated Environmental and Economic Accounting, SEEA)を公表し、国民福祉(welfare)の国際比較計算を行うようになってきた。

4  国富論から幸福論へ
近代国家がこぞってGDP指数を自国の富の豊かさとしてきたなか、ブータン王国は「国民総幸福」(GNH: Gross National Happiness)を掲げている。そこでは経済的繁栄(economic prosperity)という計測可能な量的目標に加えて、計測できない三つの目標、すなわち環境保全(environmental preservation)、文化促進(cultural promotion)、良い統治(good governance)をブータンの政策に反映しようとするものであった。
*平山雄太「ブータンのGNH」2014.10.2
*平山修一「アジア諸国のGNHから日本が学ぶ」2015.8.6
*平山雄太「ブータンのGNH国際会議11月報告」2015.12.3
会計は客観的経済尺度に基づいて、会計単位(家、企業、国)が置かれている状況を測定し、勘定分類、集計、再統合を経て比較秤量することから、GNHのような「心情」の評価はできない。
人の幸せを測定するには国民経済計算は何の役にも立たず、現在の地球の、人類の持続可能性と気候変動の問題の大きさを考えれば、環境のコストを簿外にしておく余裕はない。こうした環境の価値が経済発展に貢献していることに経済学者が気付き始めている。このように言うグリーソン・ホワイトはこの地球環境の救世主として「会計」を名指しした。
アメリカでは2010年3月24日に成立した国民健康保険法(法律番号111-148)の5906条に、医療を中心とする社会保障、温暖化防止など個人の幸福度にかかわる主要全国指数システムKNI(Key National indicators System)の開発を定めた。
EUは「2020年戦略(Europe2020)」を掲げ、大学卒業者の比率向上、温室効果ガスの削減、64歳までの就業率向上、貧国者絶対数の削減など5大目標(各数値目標あり)を定め「GDPを超えて(GDP and beyond :Measuring progress in a changing world)」を提案(2009年8月20日)した。
このように量より質の時代へ、国富論(GDP)から幸福論(Happiness)へ新指標を政府が開発するのは、国全体の経済規模の量的拡大よりも健康、教育、環境などの状況を計測し、こうした非GDP指標の数値を引き上げることが重要だと考えたからである。
 ミクロ経済面でも近時は企業情報として非財務情報の重要性が増している。株主の関心事もROE(自己資本利益率)から、ESG(Environment環境,Social対境, Governance統治)の開示に移行してきた。当座の企業存続ではなくして、当該企業の持続可能性を予測する情報にシフトしてきた。特に重要な関心事は「気候変動にかかわる情報」の開示である。米国のSEC(証券取引委員会)は2010年1月に気候変動に関する解釈ガイダンス(interpretive guidance)を公表し、10K-Form提出企業の財務報告に気象変動関連のリスク情報開示を明確にした。そのガイダンスでは、特に①現行の気象変動関連規制に関する重要な影響、②気候変動関連の国際的合意や条約が事業活動に与える重要なリスク・効果、③気候変動関連の法的・技術的・政治的・科学的な事業環境の変化がもたらす機会・リスク、④気候変動の物理的な影響、を記載事項として例示している。

5 カーボン付加価値計算の会計的考察(環境会計)
会計的指標であるROE(自己資本利益率)は資本制社会の効率性(efficiency)を示す概念として親しく使われてきた。
自己資本利益率(return on equity)=売上高純利益率×総資本回転率×財務レバレッジ
純利益     純利益     売上高     総資本
自己資本 =  売上高 ×   総資本×    自己資本

これに負けずとも劣らない価値創造の効率性を示すものに「付加価値」がある。環境に対する企業努力と成果(自然環境へ排出した二酸化炭素量と社会貢献量としての付加価値額の対応にあると仮定して)、すなわち物量(排出ton-CO2)表示される二酸化炭素は自然環境へのマイナスのインパクトであり、金額測定した付加価値額は企業が稼得した社会環境へのプラスのインパクトであることから、これを対比することで、企業活動が環境に如何に反映しているかが判断(環境効率)できる。
次の算式に基づいて二酸化炭素の生産性分析をおこなう。この構造式は付加価値率とカーボン回転率に分解できることから、各比率から有効な解釈が出来よう。
    

 1) 付加価値率は企業の産み出した創造価値額の総取引高(総収入ないし総売上高)比率である。この比率が高ければ、それだけ効率のよい収益を上げ、産み出した付加価値による社会配分(人件費、配当、租税など)ないしは社会貢献度が高いことが示される。
 2) カーボン回転率は排出二酸化炭素のトン当たり(ton-CO2)の総取引高(売上高)を貨幣表示したもので、排出量の効率性ないしは二酸化炭素の生産性を示している。カーボン回転率を企業毎に時系列化を図ると二酸化炭素排出にかかわる企業努力がカーボンあたりの生産性として反映し、有効な指数となる。この比率を環境効率として表示する社会責任 (CSR)報告書が多い。
3) 二酸化炭素生産性は上記のカーボン回転率に付加価値率を乗じた係数である。これは1トン当たりの付加価値額で表示される。この金額数値の高い企業ほど収益性が高く、かつ環境にやさしいことになる。多くの企業がカーボン回転率を環境効率とするなかで、日本特殊陶業のCSRはこの比率を採用していた。このようにして付加価値計算書(出典:EDINET)から導いた各社の付加価値額と二酸化炭素排出量(出典:経済産業省「環境報告書プラザ」)との対比による環境効率(環境格付け指標)を考察したことで、簿記機構を前提とする「環境会計」が可能となった。
4)参考までに産業界では最近ROE(自己資本当期利益率)がカーボン債務(削減費用)によってどのぐらい影響を受けるかの指標(カーボンROE)を構想している。
利益―カーボン債務(15,000円/CO2-ton)
           自己資本


5) この38社の付加価値データを図表で見ると自動車産業の上位二社のほか二酸化炭素生産性の高いのが富士ゼロックスと積水ハウスであった。逆に生産性の極度に低いのは電力業界である。特に、東京電力の数値は、当時中越地震にともなう刈羽原子力発電所や福島第一・第二など計7基の発電機運転中止が、また中部電力にあっては静岡県御前崎の浜岡原発2基の長期運転停止(平成20年12月廃炉決定)に伴う、火力代替が原因と考えられる。
電力・鉄鋼・セメント・紙パルプといった基幹産業において、この生産性と自動車産業のそれとを比較するとおおよそ300倍の相違(トヨタ比)が生じている。また、電力業界の生産性(6社平均ton-CO2 当り5,114.5円)を家庭用3KW太陽光(年間総発電量3,000KW、売電価格60,000円)の年間CO2換算量500トンと比較すると、付加価値ないしは売電価格当りの排出量の23分の1となる。なお、一人当たりの年間CO2 排出量が9.6トンということから推察すると、家庭用太陽光発電が節約するCO2量は50人分ともなる。この辺に電力会社がグリーンエネルギーを買い取る利点はあるようである。

6 カーボン国民総生産性の検討
前出の企業付加価値に代えて一国のGDP(国民総生産高)をその国が排出したCO2 量で除すことでCO2トン当たりの国民総生産額が算定できる。これを仮にカーボン(国民総)生産性(率)と名付け、この生産性が高いほど資源を効率的に消費し、もって国民の豊かさをも示していると仮定してみた。以下に中国の係数を使って等式を示す。
CO2 生産性(効率性)    × 1人当たりCO2排出量    = 国民所得
 GDP(10,380.38十億ドル)            CO2 (8,205.86百万トン)            GDP
 CO2(8,205.86百万トン)       ×        人口(1,364,270千人)     =      人口
  1,265 ドル                      6.015トン              7,609ドル
                                  
<類型の解説>
類型①「上位CO2排出国」
国と地域別の排出総量に代えて排出量順位を「CO2 順位欄」に示し、国民1人当たりCO2排出トンを「1人当たりCO2」欄に表示した。GNH欄にその順位の有無にかかわらず排出量の多い順の10か国がこの表である。GDP順位欄からも伺えるようにみな国民総生産高(GDP)は高い(平均10位)。人口の多い中国やインド、そしてロシア、イランのCO2生産性は低い。GDP19位のサウジアラビア、29位のイランは産油国で、原発はないに等しい。この二か国を除くと原発(カッコ内は発電占有率を%で示す)を保有することでCO2 排出量(化石燃料の消費)を抑制している。
 
日本を例にこの表を説明すると、GNHは53か国中46番と低位にあり、CO2は世界5番目に多く、これに伴うGDPは3番目に位置している。CO2トン当たりのGDPは3,611ドル、国民1人当たりの年間CO2排出量は9.6トンとなる。同程度の排出量を示している国にドイツ(9.8トン)、韓国(11.8トン)が続き、ともに産油国でないことから、原発依存度(日本は2012年休止中)が高い。なお、CO2排出上位5か国のCO2 合計排出量(18,116.35百万トン)は120か国合計(29,886.23百万トン)の61%、同GDP合計額(36,322.61億ドル)は120か国合計(77,055.91 億ドル)の47%に上っている。
類型②「CO2生産性の高い国」
 

類型③並びに④「1人当たりCO2排出量の少ない国」
 

 

累計⑤「1人当たりCO2排出量の多い国」
 

累計⑥並びに⑦「CO2生産性の低い国」
 
 
 類型⑧「その他GNH登録国」
 
類型②は生産性、CO2排出量、国民所得のすべての面で理想的な立ち位置にある。エネルギーの豊富さと福祉国家であることが特徴である。③④は産油国ではなく、農業・漁業を中心とする零細な国家であり、GNHに登録がない地域は生産性、CO2排出量、国民所得など極貧の状態にある。⑤は産油国であり、CO2の消費が多く、生産性が低い。⑥⑦はCO2の生産性が低いにもかかわらず、CO2消費量が高く、多くは産油国である。日本を含む⑧はCO2のコントロールができる経済的に豊かな国家群である。

図表5-1 生産性・国民所得等の総括表
こうして類型②~⑧を統合したこの分布図をいかように考え、地球規模の対策をとるかはそれぞれの国家や地域に住む人々の叡智である。海外の事情を周知の諸氏はこの表をいかに分析されようか。ともあれ、類型②(ヨーロッパの先進国)と類型⑤(産油国)が対照的な位置にありながら、国民所得という観点からは同程度である。GNHの国家間順位の総平均に意義はないものの、前者②8位、後者⑤が25.5位(③39.1位、⑥38.6位)であることからも、産油国のCO21人当たりの消費量削減とその生産性向上(③⑥⑧)の努力が必要である。
最後に総括図に類型①にあった「上位CO2排出国」10か国を投影してみた(図表5-2)。これらの国(特に、ドイツ、韓国、米国、日本、カナダなど)はCO2の排出量はもとより、GDPも高く、1人当たりのCO2消費量を改善し、トン当たりの生産性を向上させる力量のある国々である。
 
ここに提案したカーボン国民総生産性(率)の公式は一国のCO2 当たりGDP生産性に国民一人当たりのCO2消費量を乗じて国民所得としたものです。近代国家が求める国家の豊かさ(国民の幸福度)はCO2の排出量(自然環境)を減らし、国民所得(社会環境)を最大にすることと仮定して、そのためにカーボン国民総生産性(効率)を説いた。その数値には国や地域が置かれている各種エネルギーの入手状況、気候・風土、国民性にも大きく左右されることから、一律の施策は採りようがない。それが次に取り上げるCOP21(パリ協定)で示されたCO2排出規制に関する「共通だが差異のある責任」(原則)という終結であった。

7 COP21のとりきめ
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回契約国会議(The Conference of the Partie 21)がフランス・パリで2015年12月1日から開かれ、同月12日に「パリ協定」を採択して散会した。COP17(2011年)で、2020年以降の新たな温暖化対策の国際枠組みをCOP21の場で採択することとされていたことから、先進国だけに対策を義務付けた京都議定書(COP3)に代わり、途上国を含むすべての国が参加する枠組みを目指し、196の国と地域から代表が集まり議論・調整がなされた。146の国と地域が会議に先立ち提出した自主規制案を尊重し、各国・各地域の削減目標(5年ごとに見直して国連に提出)に法的拘束力を設けず、産業革命前(1850年)の気温をもとに、その後の地球温度の上昇を2℃以内(努力目標1.5℃以内)に抑えようとする目標を立てた。こうして、今世紀後半には人間活動による温暖化ガス(GHG)の排出量を森林や大海などが吸収する量と均衡する状況に減らす努力目標を立てた。また2025年までに途上国に対して年間1,000億ドルを下限とする支援を定めることが盛り込み、途上国の排出量増加を押さえて経済的豊かさを満たす工夫も盛り込まれた。

図表6 新たな温暖化ガス排出削減目標

米 国   2025年に05年比26~28%減
E U    2030年に1990年比40%減
日 本   2030年に13年比26%減
ロシア    2030年に1990年比25~30%減
中 国   2030年にGDP当たりCO2を05年比60~65%減
インド    2030年にGDP当たりCO2を05年比33~35%減
ブラジル  2025年に05比37%減

出典:日本経済新聞10月24日夕刊
各国の提案の中には、削減の比較が不可能に思える連立方程式用の複雑な計算もあり、また2025年までに途上国に対して年間1000 億ドルを下限とする支援(和解)金を支払らい排出量増加を経済的に調整する提案が含まれている。
カーボン付加価値計算は個別企業のCO2の消費効率を指数化したものであった。カーボン国民総生産性は国家単位でのCO2の消費効率指数であったことから、この内外2つの指数による規制が地球環境改善できょう。

むすび
黒澤清教授は半世紀も前に会計学のborder-line science に言及しておられた。すなわち、「(会計は)経済と法律と統計との三つの領域にまたがる研究分野であって、その境界線上に立っている」と。会計は早くから法会計(Legal Accounting…株式会社会計、税務会計など)方面に発達をみる、次いで統計的手法を駆使した管理会計(Managerial Accounting…原価計算、財務分析、予算論など)の方面へ、さらに国民所得や国富ないしは社会資本を測定する社会会計(Social Accounting)に接してそのすそ野を広げてきた。
ちなみに環境省の「環境会計ガイドライン2005年版」(Environmental Accounting Guidelines 2005)に至っては「事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み」とあり、「会計」用語を単なる企業の環境情報システムの一つと解している。
統計と会計との間におけるアナロジーについて「会計は、……原価、利益、資本有高等を測定集計するにあたり、会計特有の様式、すなわち勘定(accounts)、貸借対照表、損益計算書などの手段を強制的に使用しなければならない。統計はこのような強制的様式から自由である」と黒澤教授は諫めていた。
問題は国民経済学や環境科学から「会計」にアプローチすると、会計の本質を見失い、行き過ぎた(会計技法を援用した)国民経済計算(社会会計)や(会計技法を援用した)環境報告書(環境会計)を「会計」に押し付ける恐れがある。そこで(環境や経済に拡大した)会計学をその救世主として推奨したのである。
環境省の「環境会計」は企業サイドであり、企業(の環境)責任や投資意思決定の判断材料を視野にしている。伝統的会計技法から逸脱したこの「環境(報告)会計」という領域に、グリーソン・ホワイトが救世主を求めたもので、本稿は地域環境を斟酌し国民総生産や温室効果ガスの国際的比較から、持続可能な地球環境を確保しようとする愚考である。このように従来の会計とは相当かけ離れた構想を読者諸氏はいかように判断し、実行の緒に就けようか。


<参考文献>
 黒澤清著『近代会計学』改訂増補版4刷(春秋社 1967)
片野一郎訳『会計発達史』(同文舘  1978.7)
ジェーン・グリーソン・ホワイト著川添節子訳『世界経済史』(日経BP社2014.12) DOUBLE ENTRY、How the merchants of Venice shaped the modern world and how their invention could make or break the planet by Jane Gleeson-White
福島清彦著『国富論から幸福論へ』税務経理協会(2011)
岡部光明稿「幸福度等の国別世界順位について」明治学院大学『国際学研究』43号(2013.3)
平山雄太稿「ブータンのGNH」(レジュメ)交詢社地球環境研究会(2014.10.3)
上妻義直稿「気候変動情報の報告」広瀬・藤井責任編集『財務報告のフロンティア』(中央経済社2012.9)
黒川行治稿「公共会計学の展望」大塚宗春・黒川行治責任編集『政府と非営利組織の会計』(中央経済社 2012.4)